留学のメリット・デメリット<ポスドク研究留学への道(2)>

2019年11月25日月曜日

キャリアアップ

t f B! P L
自分が留学をしたいのかどうか、自分の心を見つめてみる、ということについて以前の記事で書きました(ポスドク研究留学への道(1)ー留学すべきかどうかー)。
自分の心を見つめた結果、留学をしたいという気持ちに気づいた時、次に考えないといけないのは、実際に留学に向けて動き出すのかどうか、ということです。こういう人生の岐路に立つような選択をする場面では、後悔しないようにきっちりとメリットとデメリットを考えて行動すべきでしょう。

今回の記事では、留学のメリット・デメリットについて説明したいと思います。

ポスドク留学では家族も大きな影響を受ける

ポスドク留学を考える人のキャリアは様々でしょうが、30歳代前半で留学する人が一番多い様です。

これぐらいの年齢になると、既に配偶者や子供が居る場合も多いでしょう。その場合、家族で海外渡航するのか、配偶者のキャリアをどうするか、という問題があります。結婚を考える相手が居る場合は、より複雑な事態になることもあるでしょう。また両親が健康問題を抱えだす時期でもあり、留学をするかどうかだけでなく、自分の人生プラン自体にもいろいろと思い巡らす人も多いかと思います。

何のしがらみも無く自由に人生を歩める、という場合でも、留学は周りのいろいろな人の助けを借りる場面も多いので、留学を考えている人は、自分が留学をするメリットとデメリットを十分に考えて前に進んでもらいたいと思います。

留学のメリット

(1)研究

留学先の国・ラボにも寄るでしょうが、研究面のメリットは当然、国内で出来ない様な研究・成果・人脈が得られる可能性がある点です。この点については、皆よく理解されていると思います。

(2)英語

また特に英語が苦手な日本人は、留学によりいくらかは英語アレルギーが緩和されることでしょう。
残念ながら、せいぜい数年の海外生活だけでネイティブ並みの英語にまでなれる人はほとんどいません。それでも、せめて1-2年でも海外生活を経験すると、予備知識がある自分の研究分野のディスカッションにはある程度ついていくことが出来るようになります。
また、日常のあらゆるところで英語で対応しないといけない環境を年単位で経験すると、国際学会での発表にも動じない度胸が付きます。

(3)キャリア

留学をしたことがある、という事実だけでは、今の時代なかなか簡単にキャリアに「箔」がつくわけではありません。しかし、国内でポスドクとして居続けた場合と、海外でポスドクを経験する場合を比べると、同じ期間に同程度のレベルのラボで同じような業績を挙げた、と仮定するなら、海外でポスドクを経験した人の方が、英語力・行動力がある程度期待できる人として評価されやすいと思います。

(4)異文化での経験

また留学は、研究者としてだけではなく人間としても成長できる大きな機会です。留学中は日本とは違った価値観や経験に触れ、自分が「普通」と思っていたことがいかに偏ったものなのかということを認識させられます。

例えば筆者は留学中、日本は同調圧力が強い一方、アメリカは多様性に非常に寛容な文化であることを、あらゆる場面で実感ししました。この文化の違いは世間でもある程度は認知されていることですが、耳で聞くのと実際に経験するのとは大きくことなります。

また留学先ラボでは多国籍のポスドクが集まっていることも多く、彼らを通じて様々な国の文化・考え方に触れることもできます。このような多様な価値観・文化に触れる機会は特に日本は少なく、留学中にそれらに触れた経験は、将来国際共同研究などを通じて様々な国の人々と一緒に仕事をする場面でも必ず生きるでしょう。

このような海外生活で得られる経験は、留学する本人だけでなく、帯同する配偶者や特に子供のその後の人生にも大きくプラスに影響を与えてくれることが期待できます。

留学のデメリット

(1)キャリア

よく言われるデメリットとしては、留学後のポストの獲得に難渋する場合がある、ということがあります。

留学後に戻れる場所が確保されている場合は良いのでしょうが、ポスドク留学後のポストを一から探さないといけない場合、物理的にも情報面でも日本とは距離が離れているため、なかなか思うようにポスト探しが進まない可能性があります。
また国内のラボの異動とは異なり、異動のタイミングが研究の状況やビザの条件により強く制約を受けることが多いです。そのため、ポスドク後のことを考えると日本でコネを作りながら次のポジションに備えた方が良い、という意見も確かにあります。

しかし筆者は、ポスドクとしてであれ海外にポストを見つけて留学できる人は、帰国時も自分の新天地を見いだせる能力がある人だと思います。ポスドク後のポジションを得ることがその人の目標なのであれば国内で研鑽を積むのも良いでしょう。しかし、もっと大きな目標を持っているのであれば、果敢に留学に挑むことを筆者はお勧めしたいです。

(2)研究

留学したからといって研究がうまくいく保証はなく、ビックデータが必ず出せるわけではありません。むしろ日本語なら十分にボス・同僚と議論できるところが、英語というハンデを抱えることにより日本に居る時よりも思うように研究が進まない、という可能性もあります。

(3)異文化での経験

環境が変わることに適応できるかどうか、また治安の問題、病気やトラブルに巻き込まれた時の不安、などが懸念材料として挙げられます。これらは研究者本人のみならず、帯同者にも起こりうる懸念であり、行ってみなければ分からない点も非常にやっかいです。

メリットのところで海外経験は人生にプラスに作用すると期待できると書きましたが、残念ながらそうでない場合も有りえます。これについてはそれぞれの性格にもよるでしょうし、家族と十分に話し合って留学する必要があります。

(4)お金

金銭面についても十分見通しを立てる必要があります。留学中の収入は状況に寄りますが、日本に居る時よりも家計が苦しくなる場合の方が多いです。
留学期間中に最低限生活できるだけのお金の見込みがないと家族で安心して暮らすことが難しい可能性があります。また住居の家賃と周辺の治安もある程度相関があるので、家族の安全をお金で買うつもりで出費しないといけない場面もあるでしょう。

まとめ

以上、筆者が思いつく留学のメリット・デメリットを挙げました。何事にも表裏の二面性があります。異文化での経験という一点だけを考えても、留学には良い面もあれば、悪い面もありえます。

留学を経験した筆者の感想としては、圧倒的にメリットがデメリットを上回っていたと思っていますが、それは大きなトラブルなく留学を終えられたから言えるだけかもしれません。ただ、留学に動き出す前にしっかりとその意義を考え、家族とも相談することで、留学前や留学中に困難に直面しても心が折れずに頑張ることができるはずです。

留学は生活環境やその後の人生が大きく変わりうる選択であるため、後悔のないようにしっかりと考えてのぞんでもらいたいと思います。
また、事前にできるだけたくさんの情報を集めて留学にのぞむことにより、留学初期の適応問題、留学中のトラブルはいくらか回避できる可能性があります。その辺りのことはまた別の記事で書こうと思います。

留学に関する他の記事についてはこちら(キャリアアップカテゴリー)から探せます。

QooQ